2016/3/11(金)KGIフォーラム設立記念・対話型講演会「けいはんな丘陵からグリーンイノベーションの風を!」を開催しました

投稿日: 2016/03/26 23:01:55

3月11日(金)午後1時30分から、けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)において、約 40 名の参加者を得、第 2 回『KGIフォーラム設立記念・対話型講演会「けいはんな丘陵からグリーンイノベーションの風を!」』が開催されました。

昨年 11 月の第 1 回開催に続くもので、「“もう一つの文明”を構想する人々と語る日本の未来」を共通テーマとし、今回は、「流域の思想と風土の力」をテーマとして開催されました。その概要をご報告します。

日時: 平成28年3月11日(金) 13:30〜18:30

場所: けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)3階「会議室1・2」

※当日のプログラムはこちらをご覧ください。

※会員の方はこちらから詳しくご覧いただけます。

3 月 11 日(金)午後 1 時 30 分から、けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)3 階「会議室1・2」において、約 40 名の参加者を得、第 2 回『KGIフォーラム設立記念・対話型講演会「けいはんな丘陵からグリーンイノベーションの風を!」』が開催されました。これは、昨年 11 月の第 1 回開催に続くもので、「“もう一つの文明”を構想する人々と語る日本の未来」を共通テーマとし、今回は、「流域の思想と風土の力」をテーマとして開催されました。

主催者を代表して、けいはんなグリーンイノベーションフォーラム(KGIフォーラム)代表代行の池内了先生から、「3・11」の東北大震災・原発事故は、我々に、これまでの社会の在り方、生活の在り方に反省を迫るものであった。本講演会が、これに応えるものになることを期待する旨の挨拶がありました。

講演会第Ⅰ部では、鼎談に先立ち、田中先生、印南先生、池内先生から、それぞれミニ講演をいただきました。

森里川海の連環の中でこそ、自然は、真に豊かとなる。

豊かな自然の中でこそ、人間は、真に幸せとなる。

田中克先生 ―「森里海連関学」を推進し、列島再生への道を拓く。

海辺に集まる稚魚の生態を観察する中で「森里海連環学」の着想を得た。現在、研究の第一線は退いたが、カヤックで漁村をめぐる「海遍路」などの取組によって、その「学」の普及に実践的に関わっている。

「3・11」の東北大震災・原発事故に係る復興事業の現状、巨大防潮堤の建設も引きながら、命の源である「水」によって繋がっている山、川、里、海の連環、森と海の関係が断ち切られていること、ここに、悲劇の源がある。

しかし、その一方、震災によって、瓦礫の山となった地上の姿をよそに、海の中には、魚で賑わう豊かな世界が、程なくして戻って来ていた。漁師の人たちは、その姿を見て、「太平洋銀行」との言葉を想起し、海の恵みを「利子」になぞらえ、それを限度として捕獲しながら、将来にわたって海に生きる決意を固めていった。それは、感動的であった。

絶滅危惧種は特定の動植物種のみではない。むしろ、自然と戯れて満面の笑みを浮かべる子供、そんな子供たちの笑顔である。この「絶滅危惧種」を再生し、次代に繋いでいくためには、今こそ、自然と共に生きる人間の在り方に思いを馳せなければならない。

印南敏秀先生 ―民族文化から生活文化へ。

民具が急速に失われて行っている。民具の存在は、人々がそこに生活していた証である。記録である。その喪失によって、人々の生活文化、生活技術の伝承の拠り所を失うこととなる。完璧な保全が重要なのではない、ともかく保全することが第一である。

けいはんな学研都市の開発に際して、京都府南山城郷土資料館の学芸員として地域に残されている民具等の民俗資料の緊急調査に関わった。各集落等に保全されている民俗資料を丹念に調査することで、地域の生活文化の構造が次第に明らかになってきた。

それは、今の言葉で表現すると、木津川流域の森、里、川、海の連環の姿そのものであった。当時は思いも及ばなかったが、讃岐の金毘羅宮への流し樽信仰に見られる木津川流域と瀬戸内文化との関係も発見できた。

今、思うところがある。従来の民俗学では、生業、いわゆる生産に係る民俗資料に関心が寄せられていたが、消費としての「食」に係る民俗資料は等閑視されてきた。焦眉の課題である「食」の問題を追求していく上で、民俗学的視点から「食」に関心を寄せることは、重要なことであると思っている。

池内了先生 ―未来社会のあり様としての「地上資源文明」を構想する。

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50年、60年単位で考えた場合、地下資源の枯渇は目に見えている。今の子供たちは、その地下資源枯渇の時代を生きなければならない運命にある。そのことに思いを馳せて、今を生きる我々は次代を構想しなければならない。

エネルギー密度の高い化石燃料をふんだんに使って経済発展を追求している、いわゆる現代の「地下資源文明」は、大型化、一様化、集中化の技術体系に支えられたものである。これからの「地上資源文明」は、それらとは逆の、小型化、多様化、分散化の技術体系に支えられるものである。こうした要請に応えるためには、科学の在り方も、要素還元型のものから複雑系の科学へと主軸を移さなければならい。

多くは知られていないが、そうした動きは各地で起きている。里山資本主義が注目され、自然エネルギー100%を追求している地域があり、更に、原発拒否の町も既に50以上となっている。時代は動きつつある。

「地上資源文明」の実現は、昔に戻るのではなく、地上資源の徹底利用による文明社会の構築であり、科学の成果を駆使した長期にわたる追求が不可欠である。木津川などの地名に刻まれた先の時代の社会のあり様、森里川海の連環にも学びながら英知を傾けることが重要である。

「豊かな自然」に恵まれた日本。だが、人々は、その豊かさを享受していない。

今こそ、「つなげよう、支えよう森里川海プロジェクト」を!

講演会第Ⅱ部では、環境省 自然環境計画課長をお招きし、環境施策講演会を行いました。

環境省 自然環境計画課長 鳥居敏男氏

環境施策の新たな展開 ~「つなげよう、支えよう森里川海プロジェクト」~

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日本は、生物多様性に富んだ世界有数の国である。人と動植物が 見事に共生した世界、「里山」を紡いできた日本。その姿は、人と自 然の関係の在り方を示すものとして「SATOYAMA」は世界に 通用する言葉として定着してきている。

ところが、それに逆らうかのように、化石燃料の輸入は言うまで もなく、また、食糧自給率の低さはつとに知られているところであ り、更に「森林大国」日本と言われながら多くの木材資源が輸入さ れている日本。それらを通じて、いわゆる「バーチャルウオーター」の輸入が想像を超えて多い日 本。子供たちがと自然とのふれあう姿が消えて行っている日本。

こうした現状を憂い、反省し、環境省では、昨年、2015 年 6 月、「つなげよう、支えよう森里川海 プロジェクト」の起点となった文書を、各省庁の参加の下に、有識者の知見を得て「中間とりまと め」として作成し、現在、その普及活動を行っている。

本プロジェクトが多くの市民の共感を得、また、民間資金にも支えられながら持続的に展開する ことを願っている。「つなげよう、支えよう森里川海」の合言葉の下に、「環境・生命文明社会」を 目指していきたい。

市民の地域実践活動が高く評価される社会を!

実践的「学」は、論理的「学」と同等に評価されなければならない。

各ご講演の後、質疑応答、対話が行われ、次のような発言がありました。

① 市民参加の下に、人と自然との連携を進めていく上で何が必要 か。「学」の在り方を疑うことが求められる。身近な生活との繋がり が意識されるべきである。「森里川海連関学」のような学問領域は論 文になり難い領域ではないかと思う。論文が評価対象の全てではな く、社会的実践活動を評価する仕組みが必要であろう。 ② 環境問題、特に、「森里川海の連環」の課題は、「地方分権」に 最もふさわしい課題である。民間の力を活用するといった上から目 線の発想では効果を発揮しない分野である。従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済社会にお けるものとは異なる行政の仕組み、在り方が求められるのではないか。

③ 市井に散逸している民俗資料を収集し、その文物とともに技術を伝承する仕組みが求められて いる。動態保存といった手法も必要である。「小さな博物館」を核にそうした取組を展開する計画で ある。現在、「博物館」の在り方が大いに見直されている。自治体等との協働、連携の余地が大きい。

人々の“まちづくり”の想いを、

「森のねんどの木津川物語」、ジオラマ制作ワークショップに乗せて。

KGIサイエンス&アート・カフェ

人形作家岡本道康氏の主宰による「森のねんどの木津川物語」―街づくり編―

第1回「対話型講演会」のテーマ「自然信仰と共同社会」に即し、各人の心の拠り所となっている地域の象徴を造形化することを掲げてのジオラマ制作ワークショップ

午前 10 時から 12 時 30 分まで、「講演会」の開催に先立って、KICK1階「交流サロン」で、7人の参加を得て開催されました。参加者は、童心に帰ってジオラマ制作に没頭しました。

各人のイメージする「まち」を、「森のねんど」で造形された卵型の基台に、家屋、樹木等のパーツを配置し、また川、道等を描きながら、自らの小宇宙を作り上げました。

午後5時から、エキジビション、交流懇談が、KICK1階「交流サロン」で開催されました。KGIフォーラム副代表の千田先生の乾杯の音頭で始まり、ジオラマ制作ワークショップの作品を囲んで、制作の思いを語るなど、まちづくりへの想いを交換しました。