2016/12/7(水)KGIフォーラム設立記念・対話型講演会「けいはんな丘陵からグリーンイノベーションの風を!」を開催しました

投稿日: 2017/01/02 7:19:53

12 月 7 日(水)午後 1 時 30 分から、けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)3 階「会議室」において、約 50 名の参加者を得、第 5 回『KGIフォーラム設立記念・対話型講演会「けいはんな丘陵からグリーンイノベーションの風を!」』が開催されました。

本講演会は、「“もう一つの文明”を構想する人々と語る日本の未来」を共通テーマとした連続講演会として昨年 11 月の第 1 回以来、四半期ごとに開催されているもので、5 回を数え、最終回を迎えました。

※当日のプログラムはこちらをご覧ください。

※会員の方はこちらから詳しくご覧いただけます。

そこで、今回は、これまでの講演、対話・意見交換の内容を総合する観点から、内藤正明先生(京都大学名誉教授・滋賀県琵琶湖環境科学研究センター長)から“生存可能社会”に向けた社会の変革 ~自然共生文明への転換~ をテーマにご講演いただき、その後、KGIフォーラム代表代行の池内了先生、同副代表の千田二郎先生を交えての鼎談が行われ、それを中心に議論が展開されました。

講演会の最後に、KGIフォーラム三宅幹事から「実践報告」として、この間のKGIフォーラムの活動紹介と参加者への協力要請が行われました。(文責:事務局)

主催者を代表して、けいはんなグリーンイノベーションフォーラム(KGIフォーラム)代表代行の池内了先生から、地球環境問題が深刻になっている。孫子の時代には地下資源が枯渇し社会が立ち行かなくなる危険がある。この負の遺産を次世代に押し付けてはならない。現世代には、環境問題を解決する責務がある。本日の講演会を通じてその道筋を探求したい、旨の挨拶がありました。

テーマ講演

“生存可能社会”に向けた社会の変革 ~自然共生文明への転換~

「脱炭素社会」を目指す国際社会、「自然共生型社会」への歩みを「関西」から・・・・・

内藤 正明 氏

(京都大学名誉教授・滋賀県琵琶湖環境科学研究センター長)

テーマ講演:生存可能社会”に向けた社会の変革

~自然共生文明への転換~

◇ 内藤正明氏から、ご講演と対話を通じて、概ね、次のような課題提起、問題提起をいただきました。

(「脱炭素社会」を目指す国際社会)

▼ 環境制約の下で、地球環境問題は「対応」の時代から「適応」への時代に突入している。先のCOP21での「パリ協定」では、2100 年を目標として「脱炭素社会」を目指すことが合意された。今や、世界は「低炭素社会」ではなく「脱炭素社会」へとフェーズが移っている。ファンドの投資先も「脱炭素社会」に移っている。“脱車社会”への転換も急がれている。日本の対応の遅れが目に付く。

(「自然共生型社会」への歩みを「関西」から)

▼ 「関東・首都圏」は「先端技術型社会」を目指している。関東に追いつき追い越す、そのようなスタンスを取ることは無用。「先端技術型社会」に未来はない。関西は、その歴史的、文化的優位性を生かし、「自然共生型社会」を目指すべきである。

(人類の生存基盤を掘り崩す「地球環境変動」)

▼ 環境問題は、生活→産業公害→都市公害→自然破壊→地球環境変動へと外延的に拡大している。目の前の問題を次々と外へ外へと転化し、最終的に地球環境に問題を押し付けてきた。これにより、より深刻な問題を招来する結果となっている。地球環境変動は、自らの生存基盤を掘り崩していることの証左にほかならない。人類の生存そのものを危機に追いやることとなっている。

(メンバーの幸せのための組織「共同体」)

▼ 価値観の転換なくしてこれからの社会を展望することはできない。社会のあり様には二つの型がある。一つは、共同体、もう一つは、機能体。メンバーの幸せのために組織があるのと、組織目標の達成のためにメンバーはあるのと、それらは真反対である。目指すべき社会像によって、描かれる未来は大きく異なる。どちらに立つかが問われている。

(「軍事経済」の効用と「環境破壊」)

▼ 最も効率的な経済成長(GDPの伸び)策は「戦争」である。経済的に困難に陥ると「戦争」が仕掛けられるとの言説がある。終戦直後においてさえ財界筋は武器製造・輸出について強い関心を寄せていた。経済成長にとって、軍事産業ほど魅力的なものはない所以である。しかしそれは「環境破壊」に繋がるものである。

対話(参加者との意見交換)

理論とともに市民参加による実践活動が肝要・・・・・

◇ 内藤正明先生からの「今後の日本において、関西の果たす役割(試論)」に関する補足説明と、池内了先生、千田二郎先生を交えての鼎談を踏まえるとともに、参加者からの実践事例報告もいただきながら、活発な意見交換が行われました。

▼環境問題に取り組むに当たっては、個別科学の統合が求められる。統合型の「シビルエンジニアリング学」の開拓が必要。京都大学の「地球環境学堂」の設立の際、「併任」方式によって各学部所属研究者の参画を得た経験が参考となろう。 ▼理論とともに市民参加による実践活動が肝要。実践プログラムの立案とともに、先ず実践へ歩を踏み出すことが何より重要。論より証拠である。一定の形が見えてくると、賛同者の輪が拡大していく。それは「淡路島」等各地の取組が証明している。

▼環境問題の認識を深めるには、「フューチャーデザイン」が有効である。将来世代(例えば 7 世代先)を代弁するグループと現世代を代弁するグループ間による環境問題等の討議を仕掛けることも一考に値する。また、LCA解析等による技術の適合性を検討することも肝要。

▼大規模震災の復旧には「大規模技術」が不可欠であるとの認識が一般的である。しかし、東北大震災の時の実際を見ると、「小規模・適正技術」がむしろ有効であった。「大規模技術」に頼らない地域づくり、災害復旧の道を探求することこそ重要である。

▼「先端技術型社会」の象徴ともいえる「けいはんな学研都市」において「自然共生型社会」の在り方を議論することに違和感を覚えた。しかし、未来社会を展望するとき、もう一つの在り方を探求しているKGIフォーラムの活動には意義深いものがある。

実践報告

「ABCD戦略」:A(Alternative)、B(Beginner)、C(Children)、D(Development)

◇KGIフォーラム三宅幹事から、昨年(2015 年)5 月設立のKGIフォーラムの概要とこれまで

の活動状況、更に、来年(2017 年)以降の取組の展望について説明。

▼ KGIフォーラムの始源、設立の背景は、国際高等研究所が主催する『満月の夜開くけいはんな哲学カフェ「ゲーテの会」』における議論を通じて把握した『「緑」を核とする“もう一つの文明”の探求にある。

▼2015 年 5 月、そのプラットホームとして、個人の「志」をベースに設立し、グリーンサイエンス、グリンエネルギー分野に関心を寄せて活動している。現在、「ABCD戦略」と称して『A(Alternative)“もう一つの文明”の探求』『B(Beginner)地域の伝統的未来技術を“小さな博物館”として発掘』『C(Children)子供たちの“科学体験学習”の推進』『D(Development)革新的未来技術としての“生物模倣”に関する研究開発』を旨として事業を展開している。

▼KGIフォーラムの活動展開のイメージは、左図の 2015.11.20 開催の第 1 回「対話型講演会」事務局報告概要のとおり、「①“もう一つの文明”を探究する「講演会」と、②そのコンセプトを造形化した「ジオラマ」と、③そうした取組を現実社会で実践するための「研究会」

の展開、その 3 層構造の下に」行うことにある。

▼今後、5 回にわたり開催してきた「対話型講演会」において議論してきた内容をベースに「地球・地域デザインラボ(仮称)」を開設し、「グリーンスマートシティジオラマ制作 産学連携ワークショップ」等の展開を構想している。

ジオラマ制作ワークショップ/エキジビション・交流懇談

「森のねんどの木津川物語」―未来都市編―

KGIサイエンス&アート・カフェ

人形作家 岡本道康氏の主宰による 「森のねんどの木津川物語」―未来都市編―

自然と人間の共生をテーマに、自然豊かな生活環境、あるいは「林間都市」の実現を想起しつつ未来都市(グリーンスマートシティ)を造形化し、「まちの未来」づくりに繋げるジオラマ制作ワークショップ

■ 10 時から 12 時 30 分まで、「KICK」1階「交流サロン」で、ジオラマ制作ワークショップが、街づくりに携わっている市民の方々

等、約 10 名の参加を得て開催されました。

■ 前回に引き続き、自然との共生、エネルギー利用の効率化、地域の歴史を踏まえたまちづくりなど、参加者のまちづくりに寄せる思いを語り合い、各人のイメージする「まち」を造形化。

「森のねんど」の基台に、山、川、道等に沿って家屋、樹木等のパーツを配置しながら、「未来都市(スマートシティ)」のイメージを膨らませました。

■ また、今回は、こうしたジオラマ制作とともに、年の瀬を控えて、来年の干支にちなんで、「鶏」をモチーフとする置物を、人形作家岡本道康氏の指導の下に、各人思い思いのイメージを描きながら制作しました。自ら造形することの楽しさを味わうことのできた一時でした。

■ 午後 5 時から、エキジビション、交流懇談が、KICK1階「交流サロン」で、講演会出席者の参加の下に開催されました。ジオラマ制作ワークショップ作品のほか、交通制御システムを組み込んだジオラマ、暮らしの情景を表現した「森のねんどの物語」作品を展示。それらを見入りながら、未来都市やふるさとづくりへの想いを交換しました。